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UJAだより

研究者の心の琴線に触れるー「留学のすゝめ」8年目に思うこと

UJA 赤木紀之(金沢大学),足立剛也(理事/戦略・学術WGメンバー)

At the magic touch of the beautiful, the secret chords of our being awakened.

(我が心琴の神秘の絃はめざめ,我々はこれに呼応して振動する.)

岡倉天心『茶の本』より

図1

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情報が溢れる現代だからこそ,直接の対話が求められているのではないだろうか.遠く離れていてもSlackを使ってリアルタイムで“会話”し,Zoomを使って会議することが可能となった.そして,直接人と人とが会い,盃を交わすときの喜びは格別のものとなる.われわれUJAは,2013年から海外で活躍する日本人研究者の生の声を若手研究者に届ける「留学のすゝめ」という活動をWeb上や学会でフォーラム等を開催することで行ってきたが,やはり心を震わせる人と人との出会いは重要なものだと実感している.

最近の文部科学省の発表によると,海外留学をする若者はピーク時と比較して激減したまま低空飛行を続けている(文部科学省による留学促進キャンペーン「トビタテ! 留学JAPAN」などの成功によって増加しているのは短期留学生が主体であり,その効果が全体に波及するまでもう少し時を要するだろう).確かに海外留学には多くのリスクが伴い,留学した人の全員が成功する保障はない.しかしそれでも,われわれUJAは海外留学を強くおすすめしている.それには3つの理由がある.1つ目は「異分野融合」があげられる.日本では特定の領域の国際連携と,国内での分野融合が推進されはじめているが,国外に出ることで,研究の幅が広がり真のネットワーク形成が可能となる.2つ目としては「外からの視点」をあげたい.海外に出ることではじめて日本の現状や立ち位置を知ることができ,同時に世界がいかに多様性に満ちているのかを体感することができる.そして3つ目は「機会の増大」である.国内にいては巡り合うことのできないさまざまなチャンスに,海外に出ることで巡り合う可能性がある.

だが,簡単なことばかりではない.英語が通じずに恥ずかしい思いをしたり,いまだなくならない人種差別的視線を感じたり,自分の意見を伝える方法の拙さに涙を流したり.そんな苦難に飛び込むチャレンジ精神をくれるのは,苦難を経て得られた成功をアツく語る魅力的な先達との出会いではないだろうか.ただ,そんな人が必ずしも周囲にいるとは限らない.

2019年の「留学のすゝめ」の学会企画としては,日本癌学会と日本分子生物学会で開催することができた.留学経験者あるいは現在留学中の研究者にご登壇いただき,自身の体験談をお話していただいている.スマートフォンと聴衆参加型システムSli.doを活用し,会場でライブ投票やQ&Aによって参加者全体のニーズに沿った情報提供を行えるようになった(写真1).研究者の家族の支援情報のニーズが高ければNPO法人ケイロン・イニシアチブの情報を(https://www.cheiron.jp),より長い留学を望む声が大きければフェローシップの組合わせを例示する(https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/nhpd/9784758125239/c4.html).問題を見える化すると,その後のUJA交流会(写真2)でより突っ込んだ質疑応答が交わされるようになったと感じている.やはり「留学のすゝめ」は交流会とセットでこそ絶大な威力を発揮する.そして,年々熱気を増す交流会の場でUJAメンバーが話していたのは,むしろ心を震わされているのは,自分たち自身なのではないかということ.留学を志す若手にも,留学の経験を伝えたい先達にも魅力的なものに育ってきた「留学のすゝめ」.ぜひ今年はご一緒に!

2020年3月号掲載

本記事の掲載号

実験医学 2020年3月号 Vol.38 No.4
GWASで複雑形質を解くぞ!
多因子疾患・形質のバイオロジーに挑む次世代のゲノム医科学

鎌谷洋一郎/企画
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