多くの理系分野において,女性が占める割合は依然として1〜2割程度に留まっている.この「圧倒的な数の少なさ」は,情報格差や孤立といった課題を生み出している.例えば,研究室選びや就職活動に関する情報が男性中心のネットワークのなかで共有され,女性には十分に届かないことがある.私自身も,理系分野で学び続けるなかで,進路やキャリアに関する情報へアクセスする難しさを感じてきた.大学進学後は,就職活動や博士課程進学,奨学金への応募など多くの選択肢に向き合ったが,その判断材料となる実践的な情報やロールモデルに触れる機会は決して十分ではなかった.特に,身近に女性研究者や女性技術者の先例が少ない環境では,自分の将来像を具体的に描くことが難しく,既存の支援制度だけでは補えない課題があると実感した.
こうした問題意識から,私は女子小中高生向けのプログラミング教室「griteen」を立ち上げ,情報系分野に興味をもつ女の子を増やす活動に取り組んできた.しかし,その現場で見えてきたのは,科学技術に興味をもっても,その先の進路やキャリアを具体的にイメージできず,一歩を踏み出せない女の子たちの姿だった.
背景には,社会に根強く残る画一的な「理系像」がある.理系というと,「技術一筋で,休日も研究や仕事に没頭する人」というイメージが先行しがちだ.しかし実際には,研究者,技術者,起業家,教育者など多様なキャリアが存在し,働き方も人生設計も人それぞれである.男女を問わずその等身大の姿が十分に可視化されていないことが,理系への挑戦をためらう一因になっていると感じている.
特に理系女性に必要なのは,完璧なロールモデルではない.「研究で失敗しながらも挑戦を続けている人」「子育てと仕事を両立している人」「進路に悩みながら博士課程へ進学した人」など,一人ひとりのリアルな経験に触れる機会である.理想化された成功談だけでなく,迷いや葛藤も含めた等身大のストーリーこそが,次の世代の背中を押す力になると私は考えている.
「理系を志す女性たちに,もっと多くの選択肢とリアルな情報を届けたい」―その想いから立ち上げたのが,リケジョのためのコミュニティ「RiReal」である.
私たちの主な活動は,オンラインでの「お茶会(交流会)」の企画運営だ.日常生活の悩みから研究やキャリア形成まで,誰もが気軽に話せる安心安全な場づくりを行っている.「研究室や学会で女性が少なく相談相手を見つけにくい」といった悩みが共有される一方で,「技術系職種は柔軟な働き方がしやすい」「専門性を身につけることで長期的なキャリア形成につながる」といった前向きな情報交換も活発に行われている.
現在は中学生から博士課程修了者まで幅広い世代が参加しており,参加者からは「同じ悩みを共有できる仲間に出会えた」「理系女性としてのキャリアに前向きなイメージをもてた」といった声が寄せられている.
私たちがめざすのは,単純に男女比を半々にすることではない.理系を志す女性たちが必要な情報にアクセスでき,互いの経験を共有しながら支え合える社会をつくることである.そして,その姿を見た中高生が将来への解像度を高め,自らの興味に向かって挑戦できる好循環を生み出したい.
「RiReal」の挑戦は,まだはじまったばかりだ.しかし,一人ひとりの経験や言葉には,誰かの未来を変える力がある.あなたのもつ「リアルな経験」こそが,次世代の理系女性たちを照らす希望の光になるはずである.
RiReal
https://rireal.griteen.com/
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