令和6(2024)年度の科研費の主な変更点(2024.04.05掲載)

執筆:久留米大学客員教授,ジーラント株式会社代表取締役児島 将康

 令和6年3月19日に,「令和6(2024)年度の科学研究費助成事業(科研費)の変更点等について」が発表された.先の「研究活動スタート支援」の公募のときに発表された変更点(2023.03.05の既報を参照)と重なるものがあるが,いくつか重要な変更点があるので,ここで解説しておこう.

1.基盤研究(B)の基金化について

 基盤研究(C)や若手研究と同様に,基盤研究(B)においても継続課題も新規採択課題も基金化が行われる.「令和6(2024)年度予算が国会で成立したのち,速やかに基金化に向けた手続を進める予定」とされている.これで基盤研究(B) でも研究費がよりいっそう使いやすくなることだろう.

2.審査資料の電子化及びカラー化について2023.03.082023.03.22の既報も参照)

 新たに「「学術変革領域研究(A・B)」「学術変革領域研究(A)(公募研究)」の研究計画調書をカラーで受け付けること」となった.「審査委員は電子申請システムを通じてカラーの研究計画調書(PDFファイル)を閲覧し,審査を行うこと」から,審査委員は手元のプリンタで印刷するか,PDFファイルをパソコンやタブレットで審査することになる.これによって「研究計画調書をモノクロ(グレースケール)印刷して審査委員に送付することを取りやめ」となった.

 すでに審査資料の電子化・カラー化の対象となっている研究種目は令和6年4月時点で,「特別推進研究」「基盤研究(S)」「研究活動スタート支援」「海外連携研究」「国際共同研究強化」「帰国発展研究」である.

 その他の研究種目においては,「従前と同様,モノクロ印刷された研究計画調書を審査資料として使用」「今後,審査状況を踏まえ,審査資料の電子化及びカラー化の対象研究種目を拡大していく予定」とされているので,遠からずモノクロ印刷の冊子体ではなく,カラーの電子ファイルでの審査に移行するのだろう.

3.男女共同参画推進に向けた科研費における応募要件の緩和について2024.03.05の既報を参照)

 これは既報なので,省略.

4.研究活動スタート支援及び奨励研究の審査方式の変更について2024.03.05の既報を参照)

 これは既報なので,省略.

5.研究の健全性・公正性(研究インテグリティ)の確保について

 研究インテグリティの内容については既報と同じだが,「令和7(2025)年度科研費の公募からは,e-Radに登録された研究インテグリティに係る情報を科研費電子申請システムに連携し,当該e-Rad情報を基に研究計画調書に必要な情報を入力」することとなった.

 このため,研究代表者および研究分担者は,e-Radにおいて,所属機関への研究インテグリティにかかわる誓約状況を登録していない場合は科研費へ応募できなくなるので,注意が必要だ.

6.安全保障貿易管理への対応について

 「大川原化工機」の冤罪事件であったように,「外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号)に基づき規制されている技術の取扱いを予定している場合には,当該法律や所属研究機関の規程等を踏まえ,安全保障貿易管理体制や対処方法等を十分に確認すること」が求められている.

 また,「令和7(2025)年度に助成を行う研究課題から,交付決定までに当該研究課題において外為法の輸出規制にあたる貨物・技術の提供が予定されているかの確認及び,提供の意思がある場合は研究機関の管理体制の有無について確認を行う」とされている.そして「提供の予定がある場合,管理体制が整備されている必要がありますので,研究機関は当該事務を適切に行うために必要な体制を整備し,整備状況を必ずe-Radへ登録」となっている.

 ほとんどの研究課題は該当しないと思われるが,e-Radへの登録がきちんとされていないと科研費への応募ができなくなるので注意が必要だ.

7.研究データマネジメントについて2024.03.05の既報を参照)

 これは既報なので,省略.

以上が令和7(2025)年度科研費の公募(つまり今年の申請)に向けての変更点だ.このなかでは「2.審査資料の電子化及びカラー化」が重要だ.カラーの申請書の注意点は,次の「科研費獲得の方法とコツ」の改訂版に取り上げていく予定である.

参考情報

本書関連項目

  • 1章-2.科研費の種類(P25〜)
  • 1章-4.審査のしくみ(P37〜)
  • 1章-7.科研費の基金化,調整金,合算使用,バイアウト制度(P58〜)
  • 3章-13.研究費の応募・受入等の状況―記載時の注意事項(P181〜)

これまでの速報

児島 将康

(久留米大学客員教授,ジーラント株式会社代表取締役)

書籍「科研費獲得の方法とコツ」「科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック」著者.毎年の科研費公募シーズン前後に20件近くの科研費セミナーで講演し,理系・文系を問わず申請書の添削指導を行っている.令和6年4月より研究者を支援するジーラント株式会社(https://g-rant.org/)を立ち上げ,活動している.

科研費に関する書籍・ウェビナーや制度の変更点など,科研費申請に役立つ情報を発信しております.
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