監修/佐藤隆一郎(東京大学大学院農学生命科学研究科)

本コンテンツでは,食品学分野における基礎医学にも通じる第一線の研究成果をご紹介いただきます.予防医学を実現する食品の秘められた力にご注目ください.(編集部)

本コンテンツは,実験医学同名連載(2016年8月号〜2017年7月号予定)からの転載となります.文中の施設,所属名は誌面掲載時のものとなります.


新着コンテンツ

第12回 食品が育てる腸内フローラ アガロオリゴ糖による腸内環境改善作用 NEW

著/内藤裕二,東村泰希 [2017年7月号掲載]

寒天は紅藻類のテングサやオゴノリから得られる食品素材であり,その独特の触感が好まれ,古来より心太などの加工食品として用いられている.また,寒天は食物繊維を豊富に含み,ローカロリーであることから整腸・ダイエット素材としても近年注目されている.

コンテンツ一覧

  • 第1回 食べることが動くことに─食品が代替できる運動機能の可能性

    著/佐藤隆一郎 [2016年8月号掲載](2017/4/25公開)

    これまで長寿の指標とされた「平均寿命」に替わり,現在では介護を必要としない年数である「健康寿命」に関心がシフトしている.すでに世界屈指の長寿国となっている日本において,健康寿命を延伸し,平均寿命との差(約10年)を縮めていくことが今後は重要と考えられている.つまり健康である期間に,良好な食生活,適度な運動習慣を継続させ,健康寿命を延伸させなければならない.それでも加齢により運動習慣の継続が困難になるときに,運動機能の一部を食品の力で代替できないかというアイデアに基づき,われわれは「運動機能性食品」なる概念を提唱し,活用していくための科学的エビデンスを集積すべく,基礎—応用研究を進めている.

  • 第2回 レドックスバイオロジーから見た食品と生体防御反応

    著/内田浩二 [2016年9月号掲載]

    約2万年前に絶滅したといわれるネアンデルタール人はすでに植物を食べていたという.植物は,ビタミンやミネラルなどの供給源であることはいうまでもなく,老化や疾病に対する予防効果のあるさまざまな生体調節機能成分を含むなど,機能性食品成分の宝庫である.こうした機能性の多くは,食品成分のもつ電子授受の特性,いわゆるレドックスと密接に関係している.特に,レドックスバイオロジーにおけるシグナル伝達や転写制御研究は,炎症や解毒などの生体応答に関する分子メカニズムの解明とともに,一部の食品成分の機能性に関して科学的根拠の提示を可能にし,「食による健康増進・疾病予防」への道を拓いた.

  • 第3回 緑茶カテキンを感知するしくみを知り,活かす

    著/立花宏文 [2016年10月号掲載]

    食品には生体構成成分の素材や生体エネルギーの補給という栄養機能の他に,生体防御能や疫病予防作用といった生体調節機能がある.最近では,食品の生体調節機能が注目され,特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品といった機能性食品の開発がさかんに行われている.食品の生体調節機能に関与する成分には,植物ポリフェノールに代表されるようないわば「生体異物」が少なくない.生体はさまざまな異物の侵入をToll様受容体等のセンサー分子で感知し応答することで恒常性を保持している.われわれは,異物としての食品因子も生体に感知されることでその機能性を発現するとの考えに基づき,そのメカニズムの解明に取り組んでいる.ここでは,緑茶の生体調節作用を担う主要な成分である(-)-epigallocatechin-3-O-gallate(EGCG)を生体が感知するしくみ(緑茶カテキンセンシング)について紹介する.

  • 第4回 味覚を変えてしまうタンパク質の謎ー酸っぱいものが甘くなる?

    著/三坂 巧 [2016年11月号掲載]

    食品中には多種類の呈味物質が含まれており,口に入れるとさまざまな味が感じられる.生物としての本能的意義から考察すると,「食べ物の味(味質)」とは,生物にとって食べてもよいものかどうかを判断するために,重要な情報源となっている.例えば,甘味は,代表的な糖類である砂糖が示す味である.したがって,甘味がもつ本来の意義とは,エネルギー源の存在を検出するための味質であり,「甘い」と感じる食べ物を摂取することで,生体にとって必要なエネルギーが充足されるのである.

  • 第5回 褐色脂肪と中年太り―食品から誘導される体熱産生のしくみ

    著/河田照雄 [2016年12月号掲載]

    ヒトは,食品を摂取すると,その“食品自体の温度”に由来する熱量以上に,体温が上昇することを日常的に経験している.この現象は,食事誘導体熱産生(diet-induced thermogenesis:DIT)とよばれ,2つの構成要素からなる.1つは,味覚,嗅覚などの口腔内感覚神経系を介するエネルギー代謝による上昇である.もう1つは,食品の栄養素の消化・吸収と同化の過程による上昇である.前者には食事摂取に伴う多様な因子がからむことが判明してきた.最近,成人でのエネルギー代謝の解析により,匂いや味,植物由来成分などの多様な“非エネルギー性食品成分”が“感覚受容”を介して,褐色脂肪組織(BAT)でのDITの発現亢進に深く関与していることが明らかになってきた.

  • 第6回 フードケミカルエピジェネティクスによる骨粗鬆症予防ー紅茶成分テアフラビンがDNAメチル化制御を抑制

    著/西川恵三 [2017年1月号掲載]

    紅茶と言えばイギリスを連想しがちであるが,もともとは,16世紀の大航海時代にポルトガルやオランダの商人が中国からヨーロッパに持ち運んだのが最初と考えられている.18世紀頃には,紅茶はイギリスで国民的飲料となり消費が増大したため,中国との貿易に赤字を生み出す原因となった.これが,イギリスと清とのアヘン戦争に発展するきっかけになったことはよく知られた話であり,紅茶が国の運命を左右していたのは現代人にとって少し驚きである.紅茶がイギリスではじめて売り出された当初,頭痛,結石,水腫など20項目に及ぶ効能がうたわれていたのが大英博物館で保存されている宣伝ポスターから伺える.しかしながら,効能のなかに,骨の病気である骨粗鬆症に関する記載はない.骨粗鬆症とは,骨の量や質が低下することで,骨折のリスクが高まる病気であり,高齢化社会を背景に問題になっている現代の病気である.高齢者の骨折は寝たきりや要介護につながるが,わが国の社会保障給付費に占める介護費は優に10兆円をこえており,この対策は現代人に課せられた喫緊の課題である.これに伴い,食品や食品成分がもつ骨の改善効果を検証する疫学研究もここ四半世紀で勢力的に進められている.茶に関しても骨の量を増やす効果を示唆する横断あるいは縦断研究が多数報告されてきたが,詳細な作用機序の理解にはほとんど至っていないのが現状である.本稿では,近年のわれわれの研究によって明らかとなってきた紅茶成分テアフラビンがもつ骨代謝制御の役割について解説したい.

  • 第7回 アミノ酸による骨格筋機能の制御

    著/亀井康富,畑澤幸乃,三浦進司 [2017年2月号掲載]

    アミノ酸は分子内にアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)を有する化合物である.タンパク質を構成するとともに,さまざまな生理活性物質をつくり出す原料となっている.アミノ酸のもつ基本的な性質として,他の食品と同様,一次機能(栄養機能),二次機能(感覚機能),三次機能(生体調節機能)があげられる.安全性の高い化合物であることから,食品以外の利用も進んでいる(表).すなわち,①一次機能(栄養機能):良質のタンパク質を十分に摂取していれば,必須アミノ酸(人体で生合成されないアミノ酸)が不足することはない.しかし,アミノ酸バランスのよくないタンパク質ばかりを摂取すると必須アミノ酸が不足する場合がある.植物性タンパク質のなかには,動物の成長に必要なアミノ酸(リジン等)が不足しているものもあり,栄養強化の目的でヒトおよび動物飼料に用いられる.また,食事としてタンパク質を摂取できない場合にはアミノ酸製剤として病態別の栄養管理に用いられる.②二次機能(感覚機能):アミノ酸は甘味,塩味,酸味,苦味,旨味の基本5味のうちいくつかの呈味を有している.また,アミノ酸はフレーバー(香り)として加工食品に利用されている.③三次機能(生体調節機能):アミノ酸の生体調節機能に関しては,ロイシンの筋タンパク質の同化作用,アルギニンによる血管拡張効果や免疫増強作用,またγアミノ酪酸(GABA)には血圧調節作用等が知られる.その他として,血液中の各種アミノ酸濃度を測定し,統計的に疾病(がん等)のリスクを評価しうる医療診断法も実用化されている(表).本稿では

  • 第8回 栄養の視床下部での感知と糖代謝への作用

    著/井上 啓 [2017年3月号掲載]

    血液中のグルコースのみならず,脂質やアミノ酸も,個体レベルでの糖代謝調節と密接に関連することが知られている.このような血中における栄養素の変化は,肝臓・骨格筋・脂肪組織における糖代謝に直接作用するだけでなく,視床下部による糖代謝調節機構にも影響を与える.視床下部は,個体レベルでの糖・エネルギー代謝の制御中枢として知られ,自律神経を介して,肝臓を中心とした糖代謝調節臓器の機能を制御している.実際に,グルコース・脂肪酸・アミノ酸は,視床下部に作用し,肝糖産生を抑制することが報告されている.本稿では,これらの栄養素が視床下部により感知され,肝糖代謝を制御するしくみについて,概説する.

  • 第9回 吸収されてもされなくても―食品ペプチドの生理作用

    著/原 博 [2017年4月号掲載]

    ペプチドとは何か? 物質としては,アミノ酸がペプチド結合で脱水縮合したものである.食品としてのペプチドが栄養的に注目されるようになったのは,2つの発見が発端と思われる.1つは,ジ・トリペプチドが効率よく吸収されるペプチド輸送の発見,もう1つは食品タンパク質から消化管内でホルモン様の生理活性ペプチドが生成する発見である.

  • 第10回 ビタミンによる脳機能制御

    著/喜田 聡 [2017年5月号掲載]

    「脳に効くビタミン」と言われれば,誰もが興味を覚え,常に脳に補給したいと考えるであろう.連日のマスメディアの取り扱いや,日々目に止まる広告からも,脳によい食品に対する注目度が高いことをうかがい知れる.一方,うつ病,統合失調症,心的外傷後ストレス障害といった精神疾患は,遺伝要因(遺伝子変異が原因)のみならず,環境要因との複合的な要因で発症する.この環境要因の1つが日々摂取する食物である.

  • 第11回 米から宇宙へ―unloadingによる筋萎縮を克服する

    著/井田くるみ,内田貴之,赤間一仁,二川 健 [2017年6月号掲載]

    現在わが国では,人口の高齢化に伴い,寝たきりの患者数が増加している.寝たきりは,患者本人の生活の質(QOL)の低下や医療費の圧迫へとつながるため,早急に解決するべき問題である.また,宇宙開発の技術が発展し,長期の宇宙空間での滞在が可能となってきているが,無重力環境が引き起こす筋萎縮が宇宙飛行士らを悩ませている.長期の寝たきりや宇宙フライトなど,筋肉を使わない環境をunloadingといい,このような環境で起こる筋肉の萎縮を,廃用性筋萎縮という.

  • 第12回 食品が育てる腸内フローラ アガロオリゴ糖による腸内環境改善作用NEW

    著/内藤裕二,東村泰希 [2017年7月号掲載]

    寒天は紅藻類のテングサやオゴノリから得られる食品素材であり,その独特の触感が好まれ,古来より心太などの加工食品として用いられている.また,寒天は食物繊維を豊富に含み,ローカロリーであることから整腸・ダイエット素材としても近年注目されている.

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