令和9(2027)年度の科研費の公募開始(2026.07.16掲載)

執筆:ジーラント株式会社 代表,久留米大学名誉教授 児島 将康

令和9(2027)年度の科研費公募が開始された.公募期間は,本日の7月14日(火)より9月17日(木)までである.今回の公募の主な変更点は,日本学術振興会HPからダウンロードできる資料にまとめられている(下記の参考情報を参照).ここでは主に,基盤研究,若手研究,挑戦的研究における公募の変更点について解説する(これら3つ以外の種目は,それぞれのサイトをご覧いただきたい).


さて,昨年に続いて,今年も申請書の様式の変更点はない.その中で大きな変更点は挑戦的研究(萌芽・開拓)についてであり,これらはすでに3月に発表されていたものが予定どおり実施される.


変更点は,次の3つである.


①挑戦的研究(萌芽)と基盤研究(C)の重複制限緩和:これまでは重複制限で同時に応募できなかったが,令和9年度から39歳以下の若手研究者に限って挑戦的研究(萌芽)と基盤研究(C)の重複応募が可能となり,同時に採択された場合は両方を受給できる.発表では「重複制限の緩和については,今後の応募状況を踏まえ,審査負担や審査の実効性を考慮しつつ,研究者としてのキャリア形成等にも配慮し,対象範囲を検討していく予定です」と書かれているので,今後はさらに年齢制限が上がっていくものと思われる.この変更によって,基盤研究(C)だけに応募していた研究者が挑戦的研究(萌芽)へも同時に応募するようになり,日本の研究力向上につながると思う.


②挑戦的研究(開拓)の審査方式が「2段階書面審査」となる:従来の2段階目は合議審査だったので,この変更で審査委員の審査にかける時間が減り,効率化と正確な審査につながると思う.


③挑戦的研究(萌芽)から挑戦的研究(開拓)への接続強化(予定):過去に採択された挑戦的研究(萌芽)からの発展性が確認できるようになるのと,挑戦的研究(萌芽)の最終年度前年度に挑戦的研究(開拓)に新たに応募できる「研究計画最終年度前年度応募」が導入される.


以上が今年度の科研費の変更点であるが,他にも科研費に関して2つの重要な情報がある.


1つは,令和8(2026)年度から導入された挑戦的研究(萌芽)の「若手支援強化枠」である.これは,新興・融合領域の創成につながる研究に取り組む若⼿研究者を重点的に⽀援する観点から1,000件程度設けられたものである.令和9(2027)年度公募においても,予算や応募の状況を踏まえて「若手支援強化枠」が適⽤される予定となっている.


このように,今回の基盤研究(C)との重複制限緩和や若手枠の新設などによって,若手研究者にとって挑戦的研究(萌芽)は,科研費の応募において考慮すべき重要な選択肢の1つになると思われる.


もう1つは,「研究課題の核心をなす学術的「問い」」の共有である.これは,基盤研究等の応募時に,「研究課題の核心をなす学術的「問い」」に関するWeb入⼒欄(500〜1,000文字)を新たに設け,採択後,科学研究費助成事業データベース(KAKEN)上で公開するというものである.その意図するところは,学術研究を巡る環境が本質的に変化しはじめている状況において,従来の人的ネットワークだけではこのような環境変化への対応に限界があるため,分野横断的な研究者間の新たな交流・連携やネットワーク構築のきっかけ作りを行うためである.


この学術的「問い」の入力は今年度は任意であり,申請書の記載項目には含まれず,審査に使用されるものでもないが,将来的には必須の入力項目になるのかもしれない.


以上が今年度の変更点や,新しい情報である.締め切りまでこれから2カ月と,時間は十分にあるので,よい申請書を仕上げて採択を目指してほしい.


参考情報

本書関連項目

  • 1章-2.科研費の種類(P26〜)
  • 1章-4.審査のしくみ(P40〜)
  • 1章-5.申請から採択まで(P47〜)
  • 2章-1.応募種目の選び方:複数種目への応募(P80〜)

出典

これまでの速報

児島 将康

(ジーラント株式会社 代表,久留米大学名誉教授)

書籍「科研費獲得の方法とコツ」「科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック」著者.毎年の科研費公募シーズン前後に20件近くの科研費セミナーで講演し,理系・文系を問わず申請書の添削指導を行っている.令和6年4月より研究者を支援するジーラント株式会社(https://g-rant.org/)を立ち上げ,活動している.

科研費に関する書籍・ウェビナーや制度の変更点など,科研費申請に役立つ情報を発信しております.
研究生活の役に立つ書籍なども少しご紹介しています.