このコーナーでは,本誌コーナー「ただいま後期研修中!」の一部をお読みいただけます.内容は掲載時のものです.
↑室蘭の本輪西ファミリークリニックでの外来の間の一場面.外来指導を継続して受けることで日々成長を感じる毎日である.写真手前が筆者.奥が指導医の平野嘉信医師.
田舎で育った私は地域全体の住民の健康をまもる頼られる医者になりたかった.めざしたのはそこに住んでいる人に合わせてこちらが変わる医療.迷ったすえたどり着いたのは家庭医療という道の入り口だった.
診療所で必要な能力は診療所研修でこそ学ぶことができると考え,現在所属するプログラムに進んだ.現在家庭医療の研修プログラムは数多くあるが,診療所での外来を中心としたプログラムは意外と少ない.また,良質の外来教育システムが存在することもこのプログラムの魅力であり,外来での思考過程の評価はもちろん,コミュニケーション自体の評価(外来をビデオで振り返るビデオレビューなどにて)もされている.コミュニケーションで何をやりとりできるかが外来の醍醐味だと思っている.
ある診療所では在宅での看取りを希望する患者さんと家族に出会い,家でお看取りをした.別の診療所では脳卒中やら緊張性気胸やら救急患者を次から次へと診療した.また,ある診療所では認知症患者さんとその家族を支えるためにリソースのコーディネーションを行い,そうかと思えば別の診療所では重症心不全やseptic shockの入院管理に没頭した.
現在1年間の病棟研修中だが,普段,診療所から紹介している症例を今度は紹介を受ける側として診療している.普段の診療の改善点に気づかされる点が多く非常に勉強になっている.そのほか,地域住民の健康意識を高めるためメタボリックシンドロームの講話を請け負ったり,乳幼児健診に出かけたり,訪問診療先で患者家族の介護疲れをチェックしたりと,やることは多岐にわたる.
こうした2年間の外来中心の診療所研修(有床診療所含む)と1年間の病棟研修を通して,急性期と慢性期の外来と病棟に関するバランスのとれた力と,患者さんの家族そして地域を支えるための力を身につけていきたい.
本稿執筆時は半年の離島研修修了直後だったが,「また来るんだよ」と何度も手を握ってくれる患者さん,「薬はまだあるけど先生がいなくなるって聞いたから会いにきたよ」と訪れてくれる患者さんなど,涙がこみあげてくる外来がいくつもあった.継続性や近接性を背景にしたこうした1つ1つのふれあいが,私のやりがいの多くを占めている.
どの道も不安とやりがいはつきものだが,ぜひあなたもやりたいことに正直に,まっすぐに進んでほしい.
2009年8月号掲載
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