このコーナーでは,本誌コーナー「ただいま後期研修中!」の一部をお読みいただけます.内容は掲載時のものです.
学生の頃,出会うかどうかもわからない稀な感染症を勉強することに興味がもてないと言った自分に,「万一その患者さんが来たとき,僕達以外にその患者さんを救うことはできないかもしれないと思っているんだ」と感染症科の先生に言われたことが,強烈な印象として残っています.総合診療部で働くなかで,感染症と同じく医師が困惑することが多いのが,リウマチ膠原病だと感じており,この領域を深く学びたいという気持ちが日に日に強くなっていきました.自治医科大学総合診療部の後期研修プログラムでは,1年のうちの3カ月を院内外,国内外関係なく,自由に(自治医大からの給与で)自分の研修に使うことが可能です.東京都立多摩総合医療センターリウマチ膠原病科には,米国リウマチ専門医を含む教育熱心な先生方がいるとの評判を耳にしたため,短期研修を希望したところ快く受け入れていただきました.「その疾患を鑑別にあげることができる,一度その疾患を診たことがある」ということが大きな財産になるであろうと,短期研修開始前から期待で胸が膨らみました.
↑お世話になったスタッフの方々と.中央が杉井章二部長.著者は後列右から2番目.
3カ月の短期研修でも満足いくようにと,贅沢にも一般のシニアレジデントとは異なるプログラムを独自につくっていただきました.基本的には外来研修を重視したプログラムで,1日平均2~3人のリウマチ内科初診患者を診察し,病歴聴取/身体診察が終了した段階で,曜日別に異なる上級医からフィードバックを受け,3カ月間は再診という形でフォローもしていくというスタイルが骨組みとなっています.その他,入院患者も1~2人受け持つことができ,当番日には他科からのリウマチ内科コンサルトや,救急外来での診療にも付き添います.空いた時間には,指導医からのリウマチ膠原病科に関するレクチャーを受け,知識の補完をすることもできました.慣れない環境・慣れない科の診療ゆえ,当初は不安も大きかったのですが,バックアップ体制を整備していただいたことでそのような思いは大きく軽減されました.何よりも上級医の先生から診療直後にフィードバックを受け,関節所見を筆頭としたリウマチ膠原病科特有の身体所見の「答え合わせ」をその場で受けることができるという感動が,不安を大きく凌ぎました.
「(人は移り行くものだから)人で研修先を選ぶな」という言葉をときどき耳にしますが,自分はそうは思いません.短期間でも,素晴らしい先生と出会うことが,自分のその後の人生を決定づけることがあると思います.
※東京都立多摩総合医療センターリウマチ膠原病科では,今回のようなプログラム以外にも幅広い研修を提供しています.担当の方が見学・研修に関して案内してくださるので,ご興味のある方は下記アドレスまでご連絡ください.
2012年2月号掲載
執筆者プロフィール
*無断での転載を禁止します