このコーナーでは,本誌コーナー「ただいま後期研修中!」の一部をお読みいただけます.内容は掲載時のものです.
学生時代,家庭医に興味があり,Dr.コトーのモデルとなった診療所の見学などを通じて,離島医療に強く興味をもつようになりました.初期研修医時代に接した離島帰りの先生がとても優秀に見えたことも一因です.
私が今行っている研修コースは,鹿児島生協病院の『総合力養成離島コース』にあたります.なぜ後期研修医が離島診療所に赴任するのかというと,科の枠を超えて総合的に患者を診る力を養うことができるからです.初期研修の2年間は総合病院で救急から慢性疾患まで幅広く学び,3年目は総合内科医として中規模病院での地域医療を経験しました.4年目からは中堅指導医のもと徳之島の有床診療所で研修を開始し,1年が経ったところです.
↑診療所スタッフ一同.右から3人目が筆者,中央が指導医の酒本忠幸医師.
徳之島診療所には,小児から高齢者まであらゆる年齢と疾患の患者が押し寄せます.午前は2人で外来診療を行い,午後は1人が外来,もう1人は訪問診察に出かけます.1日の外来患者数は90名前後で,外来の合間に小児の予防接種や乳児から大人までの健診,胃カメラを行い,19床の病棟患者に対応し,さらにときどき救急搬入もあります.
日々出会う患者さんのなかから印象的な1例を紹介すると,四肢のしびれを主訴に2つの総合病院で精査入院しても原因がわからなかった方が受診され,国の定める特定疾患(難病)の1つであると診断をつけることができました.治療に効果がみられ,元気になられた本人と横で喜ぶ家族の笑顔は忘れることができない経験になりました.
赴任当初はさまざまな苦労の連続でしたが,乗り越えるなかで培われたものは,何を優先すべきかを考えるトリアージ能力や医師としての基本姿勢です.家庭医,総合内科医,地域に根ざした開業医をめざす方はぜひ離島での勤務を経験してほしいと思います.またさまざまな疾患に遭遇したとき,頼りになるのは初期研修医時代にお世話になった専門医の先生方からのアドバイスです.初期研修で出会う各科の先生とのつながりは大切にしてほしいと思います.
離島診療所は『地域の期待に応えることのできるジェネラルな力量をもった医師』を育てるには最高の場所です.興味をもっていただいた方はぜひホームページを見てください.
2012年6月号掲載
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