ハーバードでも通用した 研究者のための英語コミュニケーション

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本連載が大幅加筆して単行本『ハーバードでも通用した 研究者の英語術』になりました!

本連載の主旨・概要は「はじめに~ひとりで学ぶ英語の心得」をご覧下さい

第5回 英文メールの書き方②
~具体的な英文メール・ライティングの技術

あなたは自分のメールの後半が読まれていない事実を知っていますか?

連載イラスト

メールが仕事上でのコミュニケーションの主要な手段になるにつれて,一日に届くメールの数はスパムメールを除いてもかなりの数になります.人はメールを読み,返事を書くことだけを仕事にしているわけではありませんから,仕事上でメールを読む時間は非常に限られています.したがって,あなたが送ったメールは時間をかけて注意深く読まれる可能性は低いのだという前提に立って,メールを書かなければなりません.例えば,メールで数回やりとりをしていると,前回のメールで自分が詳しく書いたはずの事項を,相手がまるで初めてのことのように質問してくることを経験したことはありませんか.このエピソードからもわかるようにメールの全文がいつも読まれているわけではないのです.とくに後半に書いたことは全く読まれない(スルーされる)か,目を通したとしてもほとんど注意を払われないと考えた方がよい場合が多いのです.私自身も忙しい時には,長いメールは最後まで読まないことがよくあります.

メールでは結論を最初に持ってくる

わかりやすい話をするためには,前置きや導入で関連事項や理由・背景を十分に説明すべきだと考えるのは一般のプレゼンテーションではごくあたりまえのことです.物語のように起・承・転・結を盛り込んで話したほうが,印象が強く説得力のあるプレゼンテーションができる場合もあり,普段の会話でも結論を最後にもってくるコミュニケーションの形式が自然で,多くの人になじみがあると思います.しかしながら,ビジネス・メールというコミュニケーションの形態においては,日本語・英語に関係なくまず結論から始め,そして詳しい説明はあとにもってくることを原則とします.これは大ざっぱに言えば,「これこれこういう理由がありますので,私はこれをあなたにお願いしたい」という「導入→結論」形式から「私はこれをあなたにお願いしたい.なぜならこれこれこういう理由がありますので」という「結論→導入の補足」形式への伝える情報のプライオリティーの変更です.そして,特に米国における英語でのビジネス・メールでは(アカデミアでの仕事上のメールはすべてビジネスメールの範疇に入ります),日本語でのビジネス・メールにくらべて,前置きや形式だった挨拶を簡略化する傾向が非常に強いのです.

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プロフィール

島岡先生 写真
島岡 要(Motomu Shimaoka)
大阪大学卒業後10年余り麻酔・集中治療部医師として敗血症の治療に従事.Harvard大学への留学を期に,非常に迷った末に臨床医より基礎研究者に転身.Mid-life Crisisと厄年の影響をうけて,Harvard Extension Schoolで研究者のキャリアパスについて学ぶ.現在はPIとしてNIHよりグラントを得て独立したラボを運営する.専門は細胞接着と炎症.
ブログ:「ハーバード大学医学部留学・独立日記」A Roadmap to Professional Scientist
過去の連載:プロフェッショナル根性論 online supplement material

Photo: Liza Green (Harvard Focus)

ジョー先生 写真
ジョー・ムーア(Joseph Moore)
1999年から2004年までハーバード大学医学部のフォンアンドリアン教授のオフィスマネージャーとして,グラントの編集とポスドクと学生のための論文や申請書の作成と編集に関わる.
現在,フリーのライター兼エディターとして,International Piano and Classic Record Review等にクラシック音楽に関する記事の執筆,サイエンスの分野ではグラント申請,論文作成,プレゼンテーションの英文校正や編集を行っている.
ウェブサイト:http://www.bandoneoneditingservices.com/

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