ハーバードでも通用した 研究者のための英語コミュニケーション

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本連載が大幅加筆して単行本『ハーバードでも通用した 研究者の英語術』になりました!

第4回 英文メールの書き方①
~伝わるメールを書いて,英語ライティング・スキルを高める

メール・ライティングの心得はアブストラクトライティングの基本と同じ

第3回までに解説したアブストラクト・ライティングと,メール・ライティングとではかなり違うように感じるかしれませんが,メールを書くうえでの心得は「アブストラクトの書き方」の回で書いた英語ライティングの基本的事項と本質的に同じです.その心得とは

・自分の一番に言いたいことを一つだけ書く.

これはすべてのライティングの基本事項です.効率的にメッセージを伝えるためには,言うべきことは一回にひとつに絞るべきです.ひとの脳の情報処理能力は複数の事柄を同時に扱うことができるほど一般には高くないのでしょう.例えば3つのトピックを1つのメールに詰め込んだ場合には,3つ目のトピックを読み終えるころには1つめのトピックがなんだったのか思い出せないこともあります.一度にいくつもの言いたいことを詰め込めば,それだけコミュニケーションの密度が薄まり,一番伝えたいメッセージが伝わりにくくなるものなのです.

・このメールで自分の最も言いたいことは何かを考える.

ライティングとは自分の考えを言葉にすることです.自分では言いたいことがわかっているつもりでも,頭の中にあるものは“漠然としたアイデアの集合体”にすぎないのです.伝えるために言葉にし,その“漠然としたアイデアの集合体”に目に見る形(=文字)を持たせることにより,初めてはっきりとした形で“自分の言いたいことに対する自分の理解の程度”がわかるものなのです.べつの言い方をすれば,「自分の言いたいことと称するする事柄」を,自分がいかに理解できていないかを思い知るものなのです.頭の中で考えることに許される大きな曖昧さや,話し言葉では許される中等度の曖昧さは,書き言葉では排除しなければならないのです.自分のメッセージを文字という一つの確定した曖昧さのない形に厳密に定義しなければならないのです.ライティングとは書くことだけではありません.ライティングとはまず「考える→書く」から始まるプロセスなのです.メールに書くことにより自分の伝えたいことの肝がはじめて明らかになるのです.

・送信前に自分のメールを読み返し,自分の最も言いたいことが書けているかを考える.

自分の考えを文字にする過程で,多くの人は自分の書いた文章が,自分の心で思っていたこととずいぶん違うことにいらだちを覚えるでしょう.どうして自分の思ったことをそのまま言葉にできないのかと.しかし,この違いにこそクリエイティブな新たな気づきの種があるのです.自分のメールのドラフトを送信前に客観的な視点から読んでみて,少しでも自分の思っていることに近づけるようにメール内容を練り直す過程に,ライティングのトレーニングとしての価値があるのです.ライティングとは書くことではありません.ライティングとは「考える→書く→読む→考える→書き直す→読む→考える」のサイクルの繰り返しを投げ出さずに自分でできるようになるセルフ・エディティング能力なのです.

・自分の最も言いたいことがメールの最初に,簡単に,明確に書けているようにセルフ・エディティングを繰り返す.

メールのドラフトを書き直す過程では,上で述べた自分の考えにより近づけるための努力と,読者の立場に立ってメールのメイン・メッセージが伝わり易いように,文章のスタイルの最適化を繰り返す努力とが必要となってきます.英文メールは送信する前に少なくとも3回はセルフ・エディティングとプルーフ・リーディング(文法・スペリング・相手の名前を正確に書いているか)を行います.重要なメールのうち一刻を争わないものであるなら,送信前に,いったん保存しておいて,数時間後に見直してセルフ・エディティングとプルーフ・リーディングを行ってから送信することも,よりこなれたメールを書くコツのひとつです.

次回は,具体的な英文メール・ライティングの技術について解説します.

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プロフィール

島岡先生 写真
島岡 要(Motomu Shimaoka)
大阪大学卒業後10年余り麻酔・集中治療部医師として敗血症の治療に従事.Harvard大学への留学を期に,非常に迷った末に臨床医より基礎研究者に転身.Mid-life Crisisと厄年の影響をうけて,Harvard Extension Schoolで研究者のキャリアパスについて学ぶ.現在はPIとしてNIHよりグラントを得て独立したラボを運営する.専門は細胞接着と炎症.
ブログ:「ハーバード大学医学部留学・独立日記」A Roadmap to Professional Scientist
過去の連載:プロフェッショナル根性論 online supplement material

Photo: Liza Green (Harvard Focus)

ジョー先生 写真
ジョー・ムーア(Joseph Moore)
1999年から2004年までハーバード大学医学部のフォンアンドリアン教授のオフィスマネージャーとして,グラントの編集とポスドクと学生のための論文や申請書の作成と編集に関わる.
現在,フリーのライター兼エディターとして,International Piano and Classic Record Review等にクラシック音楽に関する記事の執筆,サイエンスの分野ではグラント申請,論文作成,プレゼンテーションの英文校正や編集を行っている.
ウェブサイト:http://www.bandoneoneditingservices.com/

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