ハーバードでも通用した 研究者のための英語コミュニケーション

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本連載が大幅加筆して単行本『ハーバードでも通用した 研究者の英語術』になりました!

本連載の主旨・概要は「はじめに~ひとりで学ぶ英語の心得」をご覧下さい

第7回(最終回) 英文メールの書き方④
~読みやすいメールを書く3つのテクニック

積極的に段落を短いパラグラフを

また、第5回の【岡田さんのメール:推敲例2、段落をつける】で述べたとおり、意味の切れ目では、積極的に新しいパラグラフを始め、一行空けるなどして、受け取り手が読みやすく、意味を取りやすい工夫が必要です。

リストを有効に使用する

メールでは「書類AとBとCとDをお願いします」や、「条件A、B、C、Dのうちどれが適当でしょうか」などのように、複数のフレーズを並列させる必要がある場合がしばしばあります。例えば浜田さんのメールの例を見てください。

【浜田さんのメール:悪い例、並列】

Dear Dr. Williams,

It was a pleasure meeting you at the Immunology conference in Boston and I would like to accept your invitation to become a Visiting Scholar for 3 months beginning in June 2010. As we discussed, I hope to learn the techniques including intravital microscopy, multi-photon microscopy, flow cytometry, and homing assays. Regarding multi-photon microscopy, I especially would like to become proficient at excitation fluorescence and laser scanning microscopy. I would also be grateful for any information you can provide me regarding accommodations in the Boston area, the J-1 Visa process, Countway Library privileges, animal protocols, and a human resources contact to discuss my travel stipend. Will you be attending the Keystone Symposium at Taos in March? I will be attending and would like to discuss the current state of my lymph node project with you. I think the data generated thus far is quite interesting, but I would be grateful for your advice on how to best proceed. I look forward to hearing from you. Thank you very much.

Sincerely,

Dr. Takashi Hamada

浜田さんのメールの「A、B、C、and D」という並列は文法的には正しいのですが、本文を非常に読みにくくしています。こういう場合には積極的にリストを使うことを考えましょう。

【浜田さんのメール:推敲例1,リストを利用する】

Dear Dr. Miller,

It was a pleasure meeting you at the Immunology conference in Boston and I would like to accept your invitation to become a Visiting Scholar for 3 months beginning in June 2010.

As we discussed, I hope to learn these techniques:

  • 1) Intravital microscopy
  • 2) Multi-photon microscopy, particularly excitation fluorescence and laser scanning microscopy
  • 3) Flow cytometry
  • 4) Homing assays

I would also be grateful for any information you can provide me regarding the following:

  • #1. Accommodations in the Boston area
  • #2. The J-1 Visa process
  • #3. Countway Library privileges
  • #4. Animal protocols
  • #5. Human Resources contact to discuss my travel stipend.

Will you be attending the Keystone Symposium at Taos in March? I will be attending and would like to discuss the current state of my lymph node project with you. I look forward to hearing from you. Thank you very much.

Sincerely,

Dr. Hitoshi Okada

推敲例1:このように「A、B、C、and D」という並列をリストで表すことによりメールが非常に読みやすくなります。このメールでは前半では学びたい4つのテクニック、後半では必要な5つの情報が見やすく整理されています。こうすることにより、メールの目的が鮮明になります。

<注意:要求を詰め込みすぎない>

連載イラスト イメージ

このメールに関してですが、前半では学びたい研究に関する事項、後半では生活のセットアップなど事務的な書類について2つのトピックについて合計9つの項目を読者に要求しています。これは受け取る人によっては、非常にdemandingだという印象を持つ可能性があります。また多くのことを頼んだ場合には、受け取り手も忙しいので途中で失念してしまい、すべてが実行されない場合もあります。原則は1つのメールでのトピックは1つです。しかし、これはあくまでも原則であり、複数の関連したトピックを含んだメールは日常頻繁にやりとりされています。ただ最も効率的に読者にメッセージを伝えるためには、できるだけトピックを絞った方が有効です。そして複数のトピックを書いた場合には、受け取り手はすべてを理解しない可能性も念頭におかなければなりません。

メールの目的で最も多いものが頼み事です。メールを送る側としてはできるだけ自分の要求をすべて詰め込みたいものです。メールの特性上自分の要求をすべてメールに書いて、送信ボタンを押せばよいだけなのでハードルが低くく、ついついあまりにも多くのことを要求しがちです。送信するまえに、その要求が常識的なレベルのものであるか自問しましょう。どの程度の要求が妥当であるのかといのは、自分と相手との人間関係によるところが大きいので、十分に良好な人間関係ができている場合にはより多くのことを頼める可能性があります。しかし、初対面の場合などはまずは返事をもらうことが第1の目的ですので、そういうことも念頭に置いて最初のメールは最も重要な事項1つに絞ることを考えた方がよいでしょう。

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プロフィール

島岡先生 写真
島岡 要(Motomu Shimaoka)
大阪大学卒業後10年余り麻酔・集中治療部医師として敗血症の治療に従事.Harvard大学への留学を期に,非常に迷った末に臨床医より基礎研究者に転身.Mid-life Crisisと厄年の影響をうけて,Harvard Extension Schoolで研究者のキャリアパスについて学ぶ.現在はPIとしてNIHよりグラントを得て独立したラボを運営する.専門は細胞接着と炎症.
ブログ:「ハーバード大学医学部留学・独立日記」A Roadmap to Professional Scientist
過去の連載:プロフェッショナル根性論 online supplement material

Photo: Liza Green (Harvard Focus)

ジョー先生 写真
ジョー・ムーア(Joseph Moore)
1999年から2004年までハーバード大学医学部のフォンアンドリアン教授のオフィスマネージャーとして,グラントの編集とポスドクと学生のための論文や申請書の作成と編集に関わる.
現在,フリーのライター兼エディターとして,International Piano and Classic Record Review等にクラシック音楽に関する記事の執筆,サイエンスの分野ではグラント申請,論文作成,プレゼンテーションの英文校正や編集を行っている.
ウェブサイト:http://www.bandoneoneditingservices.com/

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