本コンテンツは,実験医学同名連載(2017年8月号〜)からの転載となります.バックナンバーのプレゼント応募は終了しておりますが,パズルのみお楽しみいただけるようになりました(本文の文章は掲載時のままになっております).
第95問のこたえ
先月の『すべての元素を拾え!』は楽しんでいただけましたか? パズルとしては,どこかにあるスタートマスからはじめ,矢印に従って,すべてのマスを巡る道筋を見つけることが目的となります.通常であれば最初に考えるのは,矢印がすべて入る向きになっているゴールマスや,逆に矢印がすべて出る向きのスタートマスを探すことですが,今回の問題にはそのようなマスはありません.したがって,関係する矢印が少ないマスを頼りに手探りで進めていくことになります.例えば,右上のCrマスを考えると,出る矢印が1本,入る矢印が1本なので,Crが途中マスだと仮定すると「I→Cr→Co」というつながりしかないことがわかります.また,隣のIのマスには入る矢印が1本しかないので,途中のマスだと仮定すると「Co→I」は必ずつながることになります.このような,つながる可能性の検証をくり返しながら解き進めていくと,Pマスからはじまる「P→S→Ca→Na→K→Mg→Cl→Fe→Zn→Cu→Mn→Se→Mo→Co→I→Cr」という一本道が導かれ,Feが出てくる「8番目」が答えとなります.
先月号の特集が「鉄代謝とフェロトーシス」ということで,パズルのテーマとして人体の必須元素に注目し,解答では鉄(Fe)の順番を答えてもらいました.問題に使った16種類の元素に加え,O,C,H,Nの4種類を加えた20元素が,現在コンセンサスが得られている必須元素とのこと.解答の元素順を見たときに,何かピンと来た人はかなりの知識人かと思いますが,Pから生体内の存在量が多い順につながっていく道筋となっています.必須元素の特徴とは「欠乏すると死亡し,多すぎると中毒を起こす」ことであり,各元素において至適量が存在します.細胞内の金属原子で一番存在量がある鉄の代謝も重要であることは想像に難くなく,代謝が乱れることで,細胞死が起こるのも納得です.特集では鉄依存性の細胞死に注目されていましたが,他の必須元素である,亜鉛や銅なども細胞死の引き金になるという報告もあり,あらためて,必須元素が必須とよばれるゆえんを感じたしだいです.
今月はここまで,来月のパズルもお楽しみに!